ご契約内容のお知らせ(高齢者用)
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社は「実利用者ユニバーサルデザイン」認証において、ご契約内容のお知らせ(高齢者用)が「高齢者検証済ユニバーサルデザイン」認証マークを取得しました。
認証マーク:高齢者検証済ユニバーサルデザイン
対象物 :ご契約内容のお知らせ(高齢者用)
認証番号:190014
制作会社:株式会社DNPコミュニケーションデザイン
利用者:70代~80代の男女
女性3名、男性2名 合計5名
(内訳)76歳男性、71歳女性、80歳女性、71歳女性、73歳男性
取得した認証マークについて
「高齢者検証済ユニバーサルデザイン」認証マーク
今回付与した「高齢者検証済ユニバーサルデザイン認証マーク」は、高齢者をリードユーザーとして、一連のすべての作業を同一空間で一緒に観察体験し、盲点となっていた利用者行動を発見、共有し、その結果を、「制作側の意図や制約についての理解」と「リードユーザーとなる高齢者側の身体的・心理的・機能的側面についての理解」を併せ持つ2級UDコーディネーター資格を有する専門家がすべてのプロセスに関わり、サポートを行い、対象物の情報デザインの改善に多く反映された証となります。
評価のポイント
今回の認証の対象物は、年に一度、保険契約者に送付されるものです。
この対象物の目的は、保険に加入している実利用者に以下のことを確認していただくことです。
・「自分が加入している保険の保障内容」の確認をしていただくこと
・ 「住所や連絡先などの変更」があれば、変更の手続きをしていただくこと
・ 「実は保険金・給付金の請求ができるのに、手続きを漏らしていないか」を確認していただくこと
・ 実利用者の安心をサポートするための「新しい制度や特約」を確認していただくこと 等
上記のことを確認することは、実利用者にとって、以下のようなメリットがあります。
・ 今、契約している保障内容だけで自分の用途や希望は満たされているかの確認ができる
・ 連絡先の変更手続きをきちんとしておくことで、請求手続きなどがスムーズになる
・ 保険金・給付金請求の手続き漏れに気付き、保険金・給付金を受け取ることができる
・ 自分では保険会社に連絡することができない場合に家族や代理の方を事前に指定しておくことで、連絡をとることができる制度を知り、利用することができる 等
しかし、実利用者からすると「毎年、書類がたくさん送られてきて、何から読めばいいのか、何をすればいいのか、わからない」という方も多く、後で読もうと思いながらも、気がつけば、読まないままになってしまう方もおられます。
そこで、対象物の目的を実現するために実利用者が対象物を利用する状況を、提供者と制作会社が一緒に【実利用者行動観察ワークショップ】に臨み、「具体的に何をしたらいいのか?」や「どこから読み進めればいいのか?」など、実利用者の迷いが生まれるポイントを中心に課題を抽出しました。
今回の実利用者UD認証では、「高齢な実利用者が直感的に理解できるための工夫」や「実利用者が読み進める上で、何に注意しながら読んでもらえば理解と行動を喚起できるのか」を分析し、多くの改善に反映したことを確認致しましたので、認証となりました。今後の更なる改善にも期待しております。
実利用者行動観察のようす
1)観察力向上研修(事前研修)
実利用者研究機構(以下ジツケン)の講師(中央白衣を着た男性)から、観察力向上研修で利用者観察で見誤りがちなケースの解説と対策について講義を受ける観察班メンバー(着席した男女)
2)観察力向上研修(事前研修)
ジツケンの講師(左側白衣の男性)の指導の下、観察術研修ワークショップで観察手法や当日の立ち位置などを学ぶ観察班のメンバー(立っている男女)
3)調査(実査)のようす
ジツケンの調査責任者(左側男性)の進行の下、普段通りに対象物を受取り、自然な状態で利用する被験者(着席している男性)と観察班のメンバー(立っている男女)
4)調査(実査)のようす
ジツケンの調査責任者(左側男性)の進行の下、対象物を利用する被験者(着席している女性)の様子を学習した観察手法を用いて行動観察する観察班のメンバー(立っている男女)
5)調査(実査)のようす
ジツケンの調査責任者(左側男性)が、普段通りに対象物を利用する様子を観察した後に、被験者(右側女性)に目標設定に関わる事項などをヒアリングする様子
6)気づきの共有
考察結果から、盲点となっていた利用者行動を発見し、気づきの共有を行う観察班のメンバーと、ジツケンの調査責任者(右側男性)
依頼主・制作会社の具体的な改善内容
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制作会社からのコメント
UDコーディネーター
株式会社DNPコミュニケーションデザイン 松川 雅一 氏
- 増える「高齢者」への情報デザイン改善ニーズ
- 超高齢社会ニッポン。日本の高齢者(65歳以上)の人口割合は、3割に迫る勢いで増加。高齢者は、もはやマイノリティではなく、明らかにマジョリティです。わかりやすい情報提供が、ますます求められる時代です。
- 情報デザイン改善、取組みのポイント
- まず、改善の目的を明確化・具体化すること。つぎに、実際の利用者の利用シーンを想定した改善をすること。郵送物が届く、開封、中身を閲覧、返信が必要なものは記入・返信、といった利用者行動の一連の流れを想定するには、一部ではなく「全体」を見る必要があります。一部のみを改善対象としても、その改善効果は期待できません。今回はもちろん「全体」を対象としています。そして、上記について、関係者全員でしっかりと認識合わせをし、改善に臨みました。
- 70歳以上の高齢者の開封率向上・ご家族連絡先登録シートの返信率向上
- これが今回の目的です。高齢になるほど罹患率は上昇し、認知力は低下していきます。そこで役立つのが、ご家族連絡先登録制度です。契約者が病気やケガで、自分で問い合わせができないとき。家族が各種問い合わせや手続き書類の取り寄せができる、人にとても優しい制度です。ただ、せっかくの良い制度でも、その情報が、わかりやすく伝わらないと、登録は進みません。関係者全員で実利用者行動観察→目的のための改善策を編集デザインに反映→結果、とても良い改善につながりました。
- 高齢者にわかりやすいものは、みんなにわかりやすい
- 実際の利用者の自然な行動を、関係者全員で観察し、改善策を見出す、「実利用者UD認証」。私は何度もこの認証プロセスを体験してきましたが、高齢者の行動観察は、特に気づきが多く、改善も顕著であると実感しています。高齢者にわかりやすいものは、結果、高齢でない人にもわかりやすいものになり、とても意義深い取組みだと確信しています。今後もユニバーサルデザインを推進する取組みとして、実利用者UD認証に積極的に取り組んでいきたいと思います。
株式会社DNPコミュニケーションデザイン
松川 雅一 氏
UDコーディネーター
株式会社DNPコミュニケーションデザイン 森本 泰瑛 氏
今回実査を行った契約者総合通知は、年に一度ご契約者さまに送付される重要な書類であるため、同封されるツールの数が多く、掲載される情報が多くなりがちです。また、お客さまとのコミュニケーションをとり、アクションを起こしていただくツールであるため、見やすいことはもちろん、直感的に理解を促すことが重要です。
この考えをもとに過去数年間、改善を繰り返してきましたが、今回の実査の結果、今までの改善があくまでも情報提供者視点で行われていたことが分かりました。
実査の中では、必ず読んで頂きたいと考えデザインしていた部分が読み飛ばされていたこと、異なる情報を同一の情報だと認識されていたことなどが分かりましたが、特に驚きだったのは、総合通知自体の目的がそもそも伝わってなかったということです。
つまり、いくらそれぞれの情報を分かりやすくしても、ツール全体の情報設計がしっかりとなされていないと、理解を促進できないということです。
この提供者と利用者のギャップは、実際に利用者を見なければ想定すらできなかったことで、非常によい経験ができたと感じています。
今回の調査結果をもとにした改善によって、利用者にとってより分かりやすい総合通知が作成できたと思います。今後も常に利用者のことを考え、分かりやすい資料作成に取り組んでいきたいと思います。
株式会社DNPコミュニケーションデザイン
森本 泰瑛 氏
提供者からのコメント
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社 事務改革推進部
麻生 菜央子 氏、緑川 千寛 氏、髙橋 由紀子 氏
ご加入いただいている保険契約について、「保険金・給付金等の請求漏れがないか」、「ご登録内容に変更がないか」等をご確認いただくために、毎年1回「保障内容のお知らせ」や各種お手続き案内の冊子をお送りしています。
毎年、お寄せいただくお客さまの声をもとに改善を行っていましたが、十分に対応することができず、改善の効果も見えにくい ものでした。
そこで、専門家の知見の必要性を感じ、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命として初めて「実利用者ユニバーサルデザイン認証」 の取得に取り組みました。
実際の調査に参加し、利用者であるお客さまと提供者である当社の間にギャップがあることを痛感しました。
配慮していたつもりのレイアウトによって誤った認知を導いていたり、重要な部分が読み飛ばされているなど、本来の目的がお客さまに 伝わっておらず、当社にとって想定外の受け取り方をされていたことが分かりました。
ギャップを埋めるための具体的なアドバイスをいただいたことで、利用者の立場に立った帳票改善をおこなうことができました。
また、改善案について制作会社・ジツケンさまと意見交換することで、当社に新たな気づきがあり、よりわかりやすいものに 改善できたと考えています。
今回の調査から認証までのプロセスは当社にとって大きな経験となりました。利用者であるお客さまにわかりやすいご案内を提供できるよう、引き続き、取り組んでいきたいと思います。
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社
事務改革推進部
麻生 菜央子 氏、緑川 千寛 氏、髙橋 由紀子 氏