「米国ドル建認知症保障終身特約」商品パンフレット
ジブラルタ生命保険株式会社が、「米国ドル建認知症保障終身特約」商品パンフレットにおいて「実利用者ユニバーサルデザイン」認証を取得しました。
認証マーク:実利用者検証済ユニバーサルデザイン
対象物 :「米国ドル建認知症保障終身特約」商品パンフレット
認証番号:210031
制作会社:株式会社DNPコミュニケーションデザイン
取得した認証マークについて
「実利用者検証済ユニバーサルデザイン」認証マーク
今回付与した「実利用者検証済ユニバーサルデザイン」認証マークは、保険に加入している(または加入していた)実利用者をリードユーザーとして、盲点となっていた利用者行動を発見、共有し、その結果を、「制作側の意図や制約についての理解」と「リードユーザーとなる利用者側の身体的・心理的・機能的側面についての理解」を併せ持つ2級UDコーディネーター資格を有する専門家がすべてのプロセスに関わり、サポートを行い、対象物の情報デザインの改善に多く反映された証となります。
評価のポイント
今回の認証の対象となる「米国ドル建認知症保障終身特約」商品パンフレットは、主にライフプラン・コンサルタント(営業社員)の方が、お客さまに、対象となる保険商品を説明する際に使うツールです。このツールの目的は、これから保険の加入を検討するお客さまに、この保険商品が「どういったものなのか」を説明して、理解していただくことです。
この保険の特徴は、「米国ドル建」だけでなく、「認知症保険」についても内容を理解する必要があります。認知症という言葉は多くの方が知っています。しかし、実際に自分が認知症だと診断された時に「何が必要」で「何の備え」があった方が良いのかを理解できている方は少ないと思います。おそらく多くの方は、「自分が認知症になるのは、まだまだ先のこと」とか、「認知症になったら、何もわからなくなるから、もう終わりだ」などと、間違った理解をされている方が多いのも現実です。
実際には、認知症にも種類や段階があるため、いきなり何もできなくなることはありませんし、初期段階では適切な治療を行うことで回復することや、上手に病気とつきあっていく必要もあります。その時に検査や通院、回復のための治療費、一時的な介護や施設に入るための費用などが発生するのです。今回の対象物は、まさにそのような想定外の出費に対して備えることができる保険特約です。
実際の利用者が「どのように感じ、どのような伝え方であれば理解が進んでいくのか」をしっかりと分析し、提供者と制作会社が「実利用者視点」を持って様々な制約条件の元、対象物の改善を行いました。
これによって、説明を聞く側も、説明を行う側も認知症に対する知識差があっても、より説明がしやすいツールに改善したことを確認し、認証となりました。今回、製作者が獲得した様々な知見やノウハウをぜひ他商品にも展開していただくことを期待しております。
依頼主・制作会社の具体的な改善内容
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制作会社からのコメント
株式会社DNPコミュニケーションデザイン 森本 泰瑛 氏
プロトタイプデザインのレビューで多くの課題が把握できましたが、その要因のほとんどが、実利用者の「認知症」に対する「認知」と「理解」のギャップを見落としていたことによるものでした。
認知症と軽度認知障害(MCI)があること、早期発見と適切なケアで回復が期待できること、認知症が原因で介護が必要になること、など、情報提供者が当たり前のように知っていることも、実利用者にとっては聞きなれない、もしくは聞いたこともないことばかりです。ここを見落とし、情報提供者視点で作成されたプロトタイプは、そもそも認知症とは何か、なぜ認知症に備える必要があるのかを事前に説明せずに保障内容を掲載していたため、この保険の提供価値を十分に伝えられない情報構造となっていました。
そのため改善策として情報構造の見直しを実施。プロトタイプデザインに掲載されていた情報をまずは分解・整理し、認知症に対する理解が進んだ状態で保障内容を説明し、自ずとニーズ喚起につながるよう情報設計しました。
改善策としてはすごくシンプルですが、実利用者の理解深度に合わせて情報提供をしていくことは、実利用者と情報提供者のコミュニケーションギャップを埋めるために有効な手段だと感じています。
「読みやすい」「分かりやすい」だけでなく、もっと実利用者に寄り添った「伝わる」情報を提供していけるよう今後も取り組んでいきたいと思います。
株式会社DNPコミュニケーションデザイン
森本 泰瑛 氏
株式会社DNPコミュニケーションデザイン 外岡 万由子 氏
●最初に感じた「3つの壁」
「米国ドル建認知症保障終身特約」という商品名・その特徴を初めて読んだとき、
自身の中で、3つの不安ごとが頭をよぎりました。
不安ごと1 認知症を意識する年代層に対して、米国ドル建の商品を訴求すること
⇒以前も米国ドル建商品の実査を経験し、保険以前に米国ドル建自体に対して苦手意識を持つ実利用者を目にする機会があった。そのような方々に対しても「わかりやすく・正しく・魅力的に」情報を伝えることの難しさを痛感していた。
不安ごと2 認知症になる前段階に「軽度認知障害(MCI)」が存在し、その症状にもカバーできる商品であること
⇒前提として自身が「軽度認知障害(MCI)」という用語に馴染みがなかった。
たとえば「加齢による物忘れ」の現象とは何が違うのか? 暮らしのどのような場面で「軽度認知障害(MCI)」であると気付くことができるか? 症状を自覚してしまったら、どのような行動に移すだろうか? 等の疑問が生じた。このような疑問を、同様に実利用者も持つかもしれない。パンフレットの記載内容をどこまで理解いただけるか?
不安ごと3 「特約」ならではの難しさ
⇒当然ながら、既に主契約に加入あるいは加入検討者に対して決定的な付加価値を感じていただけないと加入していただけない。主契約パンフレットに比べて少ないページ数で商品の魅力をしっかり伝えることができるか?
●社会に求められる商品であると感じたとき
上記のような難しさを感じたものの、情報収集するにつれて「軽度認知障害(MCI)」の人口は日本国内でも想像以上に多く、その先のステージ「認知症」に関しても増加傾向にある実態を知り、今後の社会、そして身近な存在である加齢していく家族を想像することで、当商品への心理的な距離感が徐々に縮まりました。
また「軽度認知障害(MCI)」は、ご本人や家族等が協力して適切なケアや取り組みを続けていけば、症状が回復する・進行を遅らせる可能性もあるということを知り、当商品を通じて、実利用者の経済的不安に寄り添いながら、一人でも多くの方に希望を持って治療に取り組んでいただきたい、その一助として、パンフレットの制作に向き合いたいという考えに至りました。
●デザインプロトタイプの大きな課題、そして改善
しかしながら、この後、実利用者目線でパンフレットのデザインレビューに臨んだところ、多くの課題が浮き彫りになりました。課題が山積みの中でも大きなテーマは下記の通りです。
課題1 実利用者の関心を高めることができていない
実利用者に対し、なぜこの特約を付加すべきか?の決定的な訴求ができていませんでした。仮に「軽度認知障害(MCI)」や「認知症」になってしまったら大変そうだという印象を持たせることができたとしても、「ふーん」で終わってしまい、実利用者の行動に移す動機付けにまでに至らない情報設計であることが判明しました。
課題2 用語・情報の構造がわかりにくい
表1ページで、商品名や見出し等の文字情報が多く、難しい印象を持たせてしまっている。また、実利用者が「認知症」「軽度認知障害(MCI)」の用語や必要性への理解が進まない中で、一方的に売りたい商品の特徴を訴求となっており、説得性に乏しい情報構造になっていることが浮き彫りになりました。
そこで実査を踏まえて全面リニューアルを行うこととし、以下のように改善しました。
改善1.導入から実利用者の関心を高める工夫を行う
実利用者の興味を掴むカギとなる表1ページを大きく刷新。
・タイトル横で「主契約が何か?」(米国ドル建介護保障付終身保険であること)=「販売ターゲットは誰か?」(主契約の加入者であること)を明示。
・販売ターゲットの関心事である「介護」を切り口に、要介護になる最も多い原因が「認知症」である事実をインパクト強く訴求し、興味を喚起させるよう工夫。
・この特約は認知症に加えてその前段階である「軽度認知障害(MCI)にも備えることができるという端的な商品特徴の記載のみに留め、次ページへ興味を持ってめくっていただけるよう工夫しました。
改善2.実利用者にはどんな価値を提供できるのかをわかりやすく
・元々、参照資料扱いとして最終ページに入れていた用語に関する説明を1-2ページへ移動し、掲載するデータも厳選して掲載。
・用語を理解していただいた上で、適切なケアの具体例と費用がどの程度かかるのかの情報を掲載。実利用者が経済的に備える必要性を実感していただき、ぜひ希望を持って治療に向き合っていただくため本商品を検討いただけるようコピー表現も工夫。
改善3.配色の工夫、図やイラストを用いて、やさしく、わかりやすく
「軽度認知障害(MCI)」や「認知症」の症状を想像しやすいイラストや、文字が読みにくい配色や理解促進を妨げる図表の見せ方を改善。
ジブラルタ生命様と何度も話し合い、多くの改善を重ねていくことで、実利用者を強く意識したパンフレットに仕上げることができました。
この大変貴重な経験を糧に、今後もジブラルタ生命様と実利用者のお役に立てるよう、思いを込めて制作活動に取り組みます。
株式会社DNPコミュニケーションデザイン
外岡 万由子 氏