株式会社かんぽ生命保険は「実利用者ユニバーサルデザイン」認証において、ご契約ハンドブック2019年版が「高齢者検証済ユニバーサルデザイン」認証マークを取得しました。
認証マーク:高齢者検証済ユニバーサルデザイン
対象物:ご契約ハンドブック 2019年版
認証番号:190021
制作会社:株式会社DNPコミュニケーションデザイン
利用者:高齢者 女性3名、男性2名 合計5名
(内訳)77歳男性、 80歳女性、72歳女性、71歳女性、79歳男性
かんぽ生命保険は、ご契約ハンドブック2015年版、2016年版、2017年版、2018年版と継続して「高齢者検証済ユニバーサルデザイン」認証マークを取得しています。
取得した認証マークについて
「高齢者検証済ユニバーサルデザイン認証マーク」
今回付与した「高齢者検証済ユニバーサルデザイン認証マーク」は、高齢者をリードユーザーとして、一連のすべての作業を同一空間で一緒に観察体験し、盲点となっていた利用者行動を発見、共有し、その結果を、「制作側の意図や制約についての理解」と「リードユーザーとなる高齢者側の身体的・心理的・機能的側面についての理解」を併せ持つ2級UDコーディネーター資格を有する専門家がすべてのプロセスに関わり、サポートを行い、対象物の情報デザインの改善に多く反映された証となります。
評価のポイント
5回目となる今回の認証の対象物は、前回に引き続き、年に一度、かんぽ生命保険のご契約者に送付される「ご契約ハンドブック」です。
この対象物の目的は、保険に加入している実利用者が、「加入している保険の利益をきちんと受け取ってもらう」ために以下の確認をしてもらうことです。
・住所や氏名などの登録内容が最新情報になっているか?
・保険料の払込方法や払込状況に間違いがないか?
・保険金を受け取る振込先口座の指定は済んでいるか?
・請求を忘れている保険金などないか?
・突然の事故や病気などによって、自分の意思で契約内容の確認が出来ないときや請求が出来ないときなど、代理で保険金を請求できる人や、代理で保険内容を問い合わせできる人を登録しているか? 等
上記のことを確認することは、実利用者にとって、以下のようなメリットがあります。
・ 「住所や銀行口座など」を最新の情報にアップデートしておくことで、病気やケガなどの際にスムーズに保険金を受け取りやすい!
・ 請求漏れがあった場合に損することなく請求ができる! 等
しかし、実利用者からすると「毎年確認をすることが、自分にとって何のメリットがあるのかわからない」という方も多く、実は自分にとって有益な情報であっても気づかれないままの方もおられます。
そこで、対象物の目的を実現するために実利用者が対象物を利用する状況を提供者と制作会社が一緒に【実利用者行動観察ワークショップ】に臨み、「確認の重要性」や「確認して行動を促すための表現」などを中心に課題を抽出しました。
今回の実利用者UD認証では、「読み進めてもらうための全体デザインの統一感」や「実利用者に行動を喚起するための工夫」を分析し、多くの改善に反映したことを確認致しましたので、認証となりました。今後の更なる改善にも期待しております。
実利用者行動観察のようす
1)調査(実査)前の指導
実利用者研究機構(以下ジツケン)の調査責任者(左側の男性)が、観察班メンバー(立っている男女)に、調査中の観察のポイントや、観察の手順・観察する位置など指導している様子
2)調査(実査)のようす
ジツケンの調査責任者(左側着席している男性)の進行の下、普段通りの「受け取り、開封、確認、保管(廃棄)」までの一連の行動をする被験者(中央の着席している女性)を観察する観察班のメンバー(立っている男女)
3)調査(実査)のようす
ジツケンの調査責任者(左側着席している男性)の進行の下、普段通りの自然な状態で調査対象物を利用する被験者(中央の着席している女性)
4)調査(実査)のようす
ジツケンの調査責任者(左側男性)が、普段通りに対象物を利用した後に、被験者(右側男性)に目標設定に関わる事項などをヒアリングする様子
5)調査(実査)のようす
行動観察終了後に、次回の改善ワークショップに向け、考察方法の指導をするジツケンの調査責任者(左側の男性)と、観察班のメンバー
6)気づきの共有
盲点となっていた利用者行動を発見し、行動観察時に書き出した観察シートを基に気づきの共有を行う調査に参加した観察班のメンバー
依頼主・制作会社の具体的な改善内容
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UDコーディネーターからのコメント
UDコーディネーター
株式会社DNPコミュニケーションデザイン 松川 雅一 氏
◎5回目の取り組み。かんぽ生命様の継続的改善への思い
多くのお客さまに、毎年、よりわかりやすく情報をお届けしたいから。かんぽ生命様は、毎年改善に熱心に取組まれており、今回で5度目となります。
◎課題は2つ。新情報への対応と、わかりやすさへのさらなる高み
これまで蓄積した改善のベースがあるので、課題は明確になっています。
◎新情報付加の際にも、実利用者UD認証はとても有効
今回新たに、WEBやアプリサービスの情報伝達が加わりました。特に高齢者は、デジタル系の情報理解やアクセスは、決して得意分野ではありません。そもそも自分事化できなかったり、誤認を与える可能性もあります。そのような利用者にも、いかにデジタル情報を「身近で・便利で・メリットのあるもの」に感じていただけるか、これが課題でした。そこで、プロトタイプによる実利用者行動観察(検証)を実施。結果、多くの有効な気づきを得ました。
◎5回目だからこそ、一層きめ細かなデザイン配慮を実現
検証で得た気づきに基づき、アップデートの姿勢で改善策を立案しました。「年に一度の確認目的の明確化」「余白調整や文字分量削減による読みやすさ向上」「サービスメリットのビジュアル化」「見出しコピー・デザイン調整による利用者行動の促進」など、様々なきめ細かなデザイン配慮を実現しました。
◎日本の現状を見据えた「良いデザイン」へ
超情報化社会、超高齢社会の日本。いまや高齢者マジョリティな社会における「良いデザイン」とは何か。今後も実利用者UD認証を通じて、その意味が検証され続けることで、利用者への最適な情報伝達が進んでいくことを望んでいます。
株式会社DNPコミュニケーションデザイン
松川 雅一