三井住友海上火災保険株式会社は「実利用者ユニバーサルデザイン」認証において、家庭用自動車総合保険「GKクルマの保険」(2019年1月改定版)のパンフレットについて、損害保険業界では初めて「実利用者検証済ユニバーサルデザイン」認証マークを取得しました。
認証マーク:実利用者検証済ユニバーサルデザイン
対象物 :「GK クルマの保険」パンフレット
認証番号:180009
制作会社:凸版印刷株式会社
利用者:40代~70代の男女
女性2名、男性3名 合計5名
(内訳)51歳女性、70歳男性、43歳女性、45歳男性、53歳男性
取得した認証マークについて
「実利用者検証済ユニバーサルデザイン」認証マーク
今回付与した「実利用者検証済ユニバーサルデザイン」認証マークは、保険に加入している(または加入していた)実利用者をリードユーザーとして、一連のすべての作業を同一空間で一緒に観察体験し、盲点となっていた利用者行動を発見、共有し、その結果を、「制作側の意図や制約についての理解」と「リードユーザーとなる利用者側の身体的・心理的・機能的側面についての理解」を併せ持つ2級UDコーディネーター資格を有する専門家がすべてのプロセスに関わり、サポートを行い、対象物の情報デザインの改善に多く反映された証となります。
評価のポイント
今回の認証の対象物であるこのパンフレットは、実利用者のみならず、代理店の方々が保険商品の説明を行う際に使うものです。
この対象物の目的は、実際に契約を検討しているお客さまだけでなく、このパンフレットを使って説明する方にとっても、使い勝手の良いものにすることを目的として、今回の認証に挑まれました。
今回の対象物は、いわゆる「自動車の保険のパンフレット」です。
自動車保険は、実利用者にとって、「自動車に乗る場合は、何かしら加入しないといけないとは理解しているが、どこの保険もだいたい同じような内容で、そんなに違いはないだろう」くらいのイメージしか持っていない方もおられます。
「きっと違いがあるとしても、保険料や事故などの時にもらえる保険金が多少違うくらい」と思っていたら、実際は自分や家族の状況に合わせた補償内容を理解して、適切に選ぶことで無駄のない安心な自動車ライフにつながるということを、意外と知らずに加入している方もおられます。
「保険料は安い方がうれしい!でも、どうせ入るなら、補償や事故などの対応がしっかりしている方がいい!」そんな実利用者の想いを叶えるためにも、「まずは自動車保険をしっかり理解していただきたい!」ということが、今回の対象物を作っている提供者の想いでもあります。
さらに今回の対象物は、代理店が自動車保険を理解する際に教材代わりとして利用している方もいる、総合的なパンフレットという特徴もあります。
今回の実利用者UD認証では、「せっかく親切に記載しているのに読まれない箇所」や「良かれと思って、わかりやすくした工夫がかえって誤認の要因になっていた箇所」などの課題を見つけ、分析し、「実利用者と対象物との関係性構築に必要な流れ」や「実利用者がストレスなく自然に内容を理解していくための動線」などをポイントに、多くの改善を反映したことを確認致しましたので、認証となりました。今後の更なる改善にも期待しております。
実利用者行動観察のようす
1)観察力向上研修(事前研修)
実利用者研究機構(以下ジツケン)の調査責任者(左側白衣を着た男性)に、利用者観察で見誤りがちなケースの解説と対策について講義を受ける観察班メンバー(着席した男女)
2)観察力向上研修(事前研修)
ジツケンの調査責任者(中央白衣の男性)の指導の元、観察術研修ワークショップで観察手法を学ぶ観察班のメンバー(着席している男女と左前の立っている男女)
3)調査(実査)のようす
実査当日、実際の会場で立ち位置の確認など、リハーサルをする観察班のメンバー(立っている男女)
4)調査(実査)のようす
ジツケンの調査責任者(左側男性)の進行の元、普段通りに対象物を受取り、利用する被験者(中央着席している女性)を行動観察する観察班のメンバー(立っている男女)
5)調査(実査)のようす
ジツケンの調査責任者(左側男性)の進行の元、被験者(中央着席している男性)が対象物を利用している様子を行動観察する観察班のメンバー(立っている男性)
6)調査(実査)のようす
ジツケンの調査責任者(左側男性)が、普段通りに対象物を利用する様子を観察した後に、被験者(右側女性)にヒアリングする様子
依頼主・制作会社の具体的な改善内容
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UDコーディネーターからのコメント
三井住友海上火災保険株式会社の基幹パンフであります「GK クルマの保険」家庭用は、改定を重ねるごとに、最初の制作コンセプトからだんだんかけ離れてしまっていた現状があり、利用者の方が使いにくいパンフレットになってしまっていました。
今回、実利用者研究機構による認証審査を行うことで、制作コンセプトを抜本的に見直すことができ、実際に使われる方の行動などを実際に知ることで、より利用者の気持ちに寄り添うことのできるパンフレットを制作することができました。
また、制作を行う人間だけではなく、クライアント様である三井住友海上火災保険株式会社のご担当者様と共同で実査を行うことにより、パンフレットに込められている思いを更に強く感じることができることが、実査の最大の特徴と感じました。
今後も、制作フローを通じた、実利用者目線でのユニバーサルデザインの普及に努めたいと思います。
凸版印刷株式会社
国弘 幸治