全労済(全国労働者共済生活協同組合連合会)は「実利用者ユニバーサルデザイン」認証において、「こくみん共済 契約更新のご案内」が「実利用者検証済ユニバーサルデザイン」認証マークを取得しました。
認証マーク:実利用者検証済ユニバーサルデザイン
対象物 :こくみん共済 契約更新のご案内
認証番号:170004
制作会社:株式会社DNPコミュニケーションデザイン
利用者:満60歳、もしくはそれに近い年齢、および組合員
女性5名、男性2名 合計7名
(内訳)39歳女性、51歳女性、64歳女性、65歳女性、67歳女性、58歳男性、60歳男性
取得した認証マークについて
「実利用者検証済ユニバーサルデザイン」認証マーク
今回付与した「実利用者検証済ユニバーサルデザイン」認証マークは、共済に加入している(または加入していた)実利用者をリードユーザーとして、一連のすべての作業を同一空間で一緒に観察体験し、盲点となっていた利用者行動を発見、共有し、その結果を、「制作側の意図や制約についての理解」と「リードユーザーとなる利用者側の身体的・心理的・機能的側面についての理解」を併せ持つ2級UDコーディネーター資格を有する専門家がすべてのプロセスに関わり、サポートを行い、対象物の情報デザインの改善に多く反映された証となります。
評価のポイント
今回の認証の対象となる「こくみん共済 契約更新のご案内」は、年に一度、組合員に送付されるものです。この『対象物』の目的は、以下の4点を組合員に正しくストレスなく理解していただくことです。
- 『組合員が、現在の契約内容を確認することができること』
- 『変更や見直しが必要なければ、来年も同じ内容で継続することができること』
- 『現在の内容よりも、より時代や生活状況に適した保障内容を追加・選択することが可能なこと』
- 『もし追加したいと思ったら、面倒な手続きはなく、この封筒に入っている内容物に記入して、そのまま送付することで、追加申込みすることができること』
■そもそも、なぜ毎年、現在の契約内容を確認する必要があるのか?
例えば、自分が加入している保険の保障内容を熟知していれば、もしもの時にきちんと手続きを行い、もれなく保障を受けることができます。しかし、細かい保障内容をいつも暗記しておくのは、なかなか難しい。だからこそ、「年に1回くらいは、契約内容を復習しておこう」そのために便利なのが、この『対象物』です。
他にも、ご自身やご家族の一年間の出来事や状況を振り返り、『自分の子どもと同じクラスの子が大きなケガをして大変だった』とか、『先進医療を受ける場合はすごくお金がかかるのよ』とか、『ケガをしたときに医療費が多くでる契約内容に変更しておけば良かった』などという話を、知人、友人、親戚から聞いいた時に『今年は契約内容を見直してみようかな』と選択し、実行できることが、年に一度送られてくるこの『対象物』の役割です。
■総評
今回の「実利用者ユニバーサルデザイン」認証でも、実際の利用者が『対象物』を使った時に、感想やアンケートでは出てこない<無意識の利用状況の課題や問題点>を、提供者と制作者が利用者と同じ空間で検証しました。特に追加・変更申込書は、実利用者が無意識で感じている『理解しにくい箇所』や『間違ってしまった箇所(優良誤認含む)』、そして『何度もページを見返してしまい利用上の負荷がかかる箇所』を発見し、直観的に間違いを無くすための工夫を『対象物』に反映させることができました。
全労済といえば、『手頃な掛け金』というイメージの方もいると思いますが、そもそも、全労済は、生活をより良くしたいと願う人びとが自主的に集まり、自分たちの暮らしを自分たちの力で守るという『助け合い』の精神から生まれた生活協同組合です。対象は、満0歳から満84歳までと幅広くカバーしています。だからこそ、労力も時間も掛かる、『プロセス型の「実利用者ユニバーサルデザイン」認証』に本気で挑戦して頂けました。「組合員を大切にしたい!」という作り手の気持ちをしっかりと反映して頂けたと思います。今後の更なる改善にも期待しています。
実利用者行動観察のようす
1)観察力向上研修
実利用者研究機構(以下ジツケン)の調査責任者(中央白衣を着た男性)が、観察班メンバー(背を向けて着席した男女)に「観察の方法」や「分析の目的」の講義を行っている様子
2)観察力向上研修
ジツケンの調査責任者(左側着席した白衣の男性)の指導の下、観察の手順や観察する位置など、実査の練習をする観察班のメンバー(右側の立っている男女と着席している男性)
3)調査(実査)のようす
ジツケンの調査責任者(右側着席した男性)の指導の下、観察の手順や観察する位置など、実査のリハーサルをする観察班のメンバー(立っている男女)
4)調査(実査)のようす
被験者の自然な利用状況の再現に影響を与えない為に服装は普段着で行動観察を行う観察班のメンバー(背を向けて立っている男女9名)
5)調査(実査)のようす
ジツケンの調査責任者の進行の下、普段通りの「受け取り、開封、確認、保管(廃棄)」までの一連の行動をする被験者(中央の女性)と観察メンバー(立っている男女)
6)調査(実査)のようす
ジツケンの調査責任者の進行の下、行動観察終了後に、被験者(右側着席した女性)に質問する観察班のメンバー(右側立っている男性)
7)気づきの共有
盲点となっていた利用者行動を発見し、気づきの共有を行う調査に参加した観察班のメンバーと、ジツケンの調査責任者(背を向けて着席している男性)
8)気づきの共有
事前研修で学習した「分析方法」と「利用者の概念モデル」を元に、目標設定に関わる事項を検討する観察班のメンバーと、ジツケンの調査責任者
依頼主・制作会社の具体的な改善内容
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UDコーディネーターからのコメント
今回の対象物改善にあたり、以下の3点を念頭に置きながら実施しました。
- 利用者行動を観察~対象物を改善、直感的理解を促せること
- 全労済からの通知物として、新しいあるべき姿を考えること
- 何よりも、組合員に寄り添ったわかりやすい内容にすること
日常誰もが経験している、DM同封物の多さ・煩雑さ・ストレス・・。
今回はまず、この根本的な課題に着目。我々ならではのパーソナル印字の技術・仕様・考え方も組み入れながら、編集デザインを抜本的に改善。プロトタイプを作成しました。
その後、「利用者」は「本当に」このプロトタイプを「わかりやすい」と感じるのか?「正しい行動」を「自然に促せる」のか?ということについて、<実利用者行動観察調査>で検証を実施。
結果、我々がいくら理屈で考えて作っても、実際の利用者には伝わらない事柄を多く発見しました。そこで、対象物の「提供者」と「制作者」が一堂に会し、改善策を検討。合意形成のプロセスを経て、完成品を作ることができました。
今後も、「利用者視点・利用者による検証」を大切にし、対象物の根本的な問題を解決、<情報をもっとわかりやすく>を一層推進していきたいと思います。
株式会社DNPメディアクリエイト
松川 雅一 氏